定額法と同じでよく用いられる償却法、それが『定率法』です。
ですが、比較的多くの会社で用いられているのは、定額法でなく、定率法の方です。
それはなぜか?
定率法の計算方法からその謎を解明して見ましょう。
旧定率法について
定率法は償却をしている資産の期首帳簿残高に、一定の償却率をかけて減価償却費を求めるやり方です。
これがどういうことかというと、仮に購入価格が100万円、償却率が0.2の資産があったとします。
ちなみに、定額法の実際の償却率はその資産の種類によって定められていますので、勝手に決めることはできません。その償却率については、別途調べたりしてください。ちなみに簿記の試験では必ず、記載がありますので、その数値を用いてください。
この償却資産の減価償却費は、
- 1年目・・・1,000,000×0.2=200,000
- 2年目・・・(1,000,000-200,000)×0.2=160,000
- 3年目・・・(1,000,000-200,000-160,000)×0.2=128,000
4年目、5年目とこのまま続くのですが、どうでしょうか?
定額法との違いが明らかですよね?
定率法の場合、毎年の償却金額が変わります。最初が大きく、年度が過ぎるにしたがって、小さくなっていきます。ですが、最終的な耐用年数が経過した時点では、定額法、定率法ともに残存価格はほぼ同額になっています。そうなるように償却率が考えられています。
この旧定率法も旧定額法と同じく、耐用年数が過ぎた時点で、残存価格が残ります。
新定率法について
新定率法も新定額法も1円まで償却できるところは同じです。
ただ、この新定率法、別の名前で、『250%定率法』ともいわれています。
どういう事かというと、償却率の求め方が、『定額法の償却率=1÷法定耐用年数』の250%ということです。
つまり、
取得価額100万円、法定耐用年数10年の償却について、(端数処理は切上)
定額法の償却率は、1÷10=0.1
新定率法の償却率は、この0.1の250%なので、0.25になります。
1年目の償却額は
1,000,000円 × 0.25 = 250,000円
では、2年目はどうなるでしょうか?
2年目は、
(1,000,000円-250,000円) × 0.25 = 187,500円となります。
3年目は、
(1,000,000-250,000-187,500) × 0.25 = 140,625円
4年目も同様に、
105,469円
5年目
79,102円
6年目
59,326円
7年目
44,495円
次が8年目ですが、ここで状況を整理しましょう。
帳簿の未償却額
(1,000,000-250,000-187,500-140,625-105,469-79,102-59,326-44,495)=133,483
となっています。
これに償却率0.25をかけると、33,371円(①)となります。
ですが、ここで注意してもらわないといけない点があります。
残り3年、これを均等償却で考えると、
133,483円 ÷ 3年 = 44,495円(②)
新定率法のルールとして、①の金額より、②の金額の方が大きい場合は、残りの期間は②の金額を償却費として償却しないといけません。
1~7年目は計算を省いていますが、①の数字の方が②の数字より大きくなっています。
どうしてこのような処理が必要かわかりますか?
定率法はその性質上、帳簿価格に償却率をかけて減価償却費を計上します。
つまり、普通の処理では1まで償却しようと思えば、耐用年数以上の年数がかかってしまいます。
そのため、先ほどのようなルールがあり、均等償却額の方が上回った場合は、その金額で償却することが義務付けられています。
そのため、
8年目
44,495円
9年目
44,495円
10年目
44,492円
(残存価格1円を残すため)
こうして、10年目で帳簿価格に1円だけ残ることになります。
帳簿価格が1円になるのは、新定額法と同じですが、新定率法の場合、途中で償却方法が変わることに注意してください。
まとめ
定率法と新定率法イメージがつかめましたか?
実務では、償却率や耐用年数などを調べないといけませんが、簿記の試験ではすべて与えられています。その中から必要な情報を使って、問題を解くことになります。
いろいろとややこしく思うかもしれませんが、計算はいたってシンプルですので、数をこなしてしっかり理解してくださいね。
ところで、定率法が使われる企業が多いという理由がわかりましたか?
毎年利益を上げていく企業にとって、資産を早く費用化することが節税の面でもメリットがあるからです。
建物などは定額法でする方が多いですが、その他の資産については定率法で償却することが多いのはそのためです。