勘定科目の中にある減価償却費、これは費用の科目にあたります。
普通、費用科目というと資金の流出が生じています。
ですが、この減価償却費は費用計上時には資金の流出はありません。
いったいなぜでしょうか?
ここでは、減価償却費の意味と、なぜこのようの処理が行われるようになったかについて見ていきましょう。
減価償却費の意味
減価償却費、名前から考えると『価値を減らして、償却する費用』という意味だと推測できます。
でも、実際よくわかりませんよね?
ですから、少し例をあげて考えてみましょう。
会社で社用車を300万円で購入しました。購入した時に車両を全額費用として処理することは簿記の世界では禁じられています。どういうことかというと、この購入した車両は、購入した年度にすべての価値を使い切るわけではありませんよね?
きちんと乗ってさえいれば、翌年も、翌々年も使用できると思います。その為、資産を耐用年数に応じて経費計上することで、きちんとした費用を見ていきましょうという話になったんですね。
この経費計上する勘定科目を『減価償却費』といいます。
実際は毎月減価償却費を計上している会社が多いと思います。
減価償却費とは、資産を期間に応じてきちんとした費用計上するためにある勘定科目です。
お金の出ない経費とは?
タイトルにもありますが、お金が減らない経費、それが減価償却費です。
こう書くと語弊があるかもしれませんね。実際には、減価償却費として経費計上時にお金が出て行かない経費です。
あたりまえですが、車両を購入するときにお金を支払います。車両を300万円とすると、
(仕訳)
借方 車両運搬具 3,000,000 貸方 普通預金 3,000,000
となります。
この時車両運搬具(=車両)は経費として処理されるのではなく、資産科目になります。
これを費用計上するときには、
(仕訳)
借方 減価償却費 600,000 貸方 車両運搬具 600,000
(直接法 金額は今回は償却期間5年、残存価格0として計算してます)
このように60万円分だけ費用として、計上されます。
仕訳の先の( )の内容は次回以降に説明しますね。
このように費用計上するときは、車の価値を減らすだけです。そのため、お金の出ない経費と言われますが、最初の購入時にはお金が出て行ってますから、そこは間違わないでくださいね。
減価償却費の計上について
さて、この減価償却費ですが、計上方法がとても多いことでも知られています。
一般的には、『定額法』 、 『定率法』 が用いられますが、『生産高比例法』 や 『級数法』などもあります。
また、2007年4月を基準として、『旧定額法』、『新定額法』、『旧定率法』、『新定率法』なども生じてきました。
また先ほどの償却の記載方法でも、直接資産を減らす、『直接法』と、減価償却累計額といった勘定を用いる、『間接法』とがあります。
このようにいろいろな計上方法などがありますが、一つ一つ全く計上方法が違います。ここで詳細に説明していると長くなるので、次回から少しづつ説明をしていきたいと思います。
この内容は、簿記の試験で必ず出題されてきますので、一つ一つきちんと整理して、どんな問題にも対応できるようにしてください。
減価償却費のある本当の理由・・・!?
さて、減価償却費がある意味ですが、先ほどのように期間に応じて経費を計上した方がきちんとした企業成績をみることができます。この意味もわかるんですが、私は本当の意味は、
『きちんとした税金を支払ってもらう』
ことにあると思っています。
少し先の話になりますが、決算処理の話をしますね。
最終決算仕訳が終わり、売上や経費が処理されて、最終的に『税引前利益』という項目が出てきます。これに約40%をかけた金額を法人税等として、納税しないといけません。
これがどういうことかわかりますか?
つまり税引前利益が多いほど、税金の金額は増えることを意味しています。
こう考えると、必ず税金を減らすにはどうしたらいいか?
これを考える人たちがいます。これを合法的に減らすことを『節税』といいます。『脱税』は違法ですし、ばれた時の延滞税などもかなりの金額になるので、きちんと納税してくださいね。
さて、先ほどの節税の話になりますが、合法的に利益を減らすためには、決算での着地予想がたちはじめた時期から、経費を計上すればいいことがわかります。
極端な話、500万円の利益が出そうな見込みがあったとします。このままいけば40%の200万円が税金として納税しないといけません。
では、期末ぎりぎりに400万円の車両を買ったとします。減価償却費という考えがなく、車両をそのまま経費にできてしまったら、(500-400)=100万円の利益となり、40%は40万円になります。
本来の200万円の税金が40万円になりました。
つまり、決算前の時期に経費を計上することで、税金を減らすことができてしまうんですね。
ですが、こんなことを全ての会社にされたらたまったものではありません。
そのため、経費として一括計上できるものは10万円までのものと決められています。それ以上の金額のものはいったん資産計上をし、ルールに応じて減価償却をしないといけないことが決められているのです。
まとめ
ここでは、減価償却の意味などについて説明しました。
どうでしょうか?イメージすることができますか?
まだまだ分かりにくいところもありますが、次回から少しづつ計算方法などの話をしていきます。
固定資産を耐用年数に応じて、経費計上すること、それが減価償却費。
きちんとした費用計上と、税金計算をするために必要であると認識してください。