貸倒引当金について見ていきましょう。
貸倒引当金、簿記の試験では、整理仕訳で出てきます。
実務でも計上している会社が多いのが現状です。
さて、貸倒引当金とはどのようなものでしょうか?
また、その特徴やルールなどどんなものがあるでしょうか?
ここでは、その貸倒引当金について見ていきます。
貸倒引当金の意味とは
いろいろな勘定科目の中に債権(お金をもらう権利)の科目がありました。
たとえば、売掛金、受取手形、立替金などがそうです。
商売というのは、物やサービスの提供をして、そのお金を回収して初めて1つの流れが完結します。
先ほどの勘定科目はまだ回収ができていない債権についての科目になります。
その為、相手先の倒産などによって、債権が回収できなくなることがあります。
このような場合、『貸倒損失』として、費用処理はすることができるのですが、次のような場合はどうでしょうか?
(例題)
3月度にA商店に商品¥10,000を売上げ、代金を掛としていたが、翌期である4月にA商店は倒産してしまい、代金は全額回収できないことになった。(決算期は3月末とします)
さて、このような場合を考えます。少し突っ込んだ話をしますので、よく確認してくださいね。
3月の仕訳処理は
売掛金 10,000 売上 10,000
となります。
4月の仕訳処理は
貸倒損失 10,000 売掛金 10,000
となります。
少し難しい話になりますが、この場合、3月の決算時点では、売上げがあがっており、これに対して税金が課税されます。
ですが、翌期の4月にその売上げが回収不可となり、貸倒損失として費用化されます。
前期で売上が上がって、課税され、翌期で費用化されて差引ゼロになります。
ですが、よくよく考えると、この貸倒損失は前期の売上に対する損失なので、前期で費用化するのが望ましいはずです。
ただ、回収できるかどうかなんてわかりませんよね?
というか、最初から倒産するとわかってたら物を売りませんよね?
このような場合に備えて、売掛金や受取手形などの債権に対して、一定の割合で見越しで費用計上します。これを『貸倒引当金』といいます。
先ほどの問題で、貸倒引当金が¥20,000設定されているとすると、
(この¥20,000を設定するときの仕訳)
貸倒引当金繰入 20,000 貸倒引当金 20,000
そのような場合の4月の経理処理は、
貸倒引当金 10,000 売掛金 10,000
となります。
つまり、貸倒引当金は債権回収に対するリスクを見積もり計上している金額です。
貸倒引当金の2つの処理方法(洗替法・差額補充法)とは
貸倒引当金は決算修正で金額を計算して計上されます。
その計上の方法に『洗替法』と『差額補充法』というものがあります。
先にお話ししておくと、あくまで処理の方法であり、貸倒引当金の金額はどちらも同じ金額になります。
さて、それをふまえて、2つの方法を例をあげてみていきましょう。
(例題)
期末になったので、貸倒引当金の計算をすることになった。前期計上した貸倒引当金が¥30,000ある。当期の貸倒引当金の限度額は¥50,000であることがわかり、その金額を貸倒引当金として計上する。
【洗替法】
貸倒引当金 30,000 貸倒引当金戻入 30,000
貸倒引当金繰入 50,000 貸倒引当金 50,000
【差額補充法】
貸倒引当金繰入 20,000 貸倒引当金 20,000
このような仕訳になります。
わかりますか?
洗替法は1度、すべての貸倒引当金をなくしてから、再度貸倒引当金を計上するやり方で、差額補充法は、当期の貸倒引当金限度額との差額を計上するやり方です。
どちらのやり方でも、貸倒引当金は¥50,000になりますが、このような2つの方法があることは覚えていてください。
その他の事項
簿記検定の2,3級では出題されませんが、貸倒引当金を計上する債権について種類分けをすることがあります。
- 一般債権
- 貸倒懸念債権
- 破産更生債権
一般債権とは、問題などのおきていない債権のことを言います。
貸倒懸念債権とは、重大な問題が発生する、もしくは発生す可能性が高い債権を言います。当然、貸倒が生じる可能性が高いため、一つ一つ個別に回収可能性を勘案し、貸倒引当金を計上します。
破産更生債権とは、破綻した債務者の債権であり、回収見込みを差し引いた全額を貸倒引当金として個別に計上することになります。
このように債権の種類に応じて、貸倒引当金の計上方法が変わります。
それは、実際に回収の可否に応じて計上することが、本来の引当金の意味に起因するからです。
こちらの内容はあまり聞きなれないかもしれませんが、このような区分があるということを知っていてください。
まとめ
貸倒引当金は試験でも、実務の決算修正でも必ず聞かれる内容です。
特に試験では、貸倒引当金の金額を算出する対象をきれいに整理しないといけません。
売掛金や受取手形ですね。
これを整理したうえで、最後にその金額に所定の利率をかけて貸倒引当金を計上します。
あとは、計上の仕方です。洗替法か、差額補充法か。
これも勘定科目の可否(戻入の有無)や、カッコの位置などで見破ってください。
このようにポイントをつかんでおけば、貸倒引当金も計算するのは難しいことではありません。
同じようなパターンでしか出題されないので、あわてずに練習していただければ、きっと大丈夫だと思います。